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ろじかりずむ

好きなんだから仕方ない

結局、私もシンデレラがやりたいのだ。ー「皆、シンデレラがやりたい。」感想

KAT-TUN上田竜也が根本宗子の作品に出る」。
ジャニーズと下北沢の小劇場を中心とした劇団を主宰しているどこかクセのある一筋縄ではいかない、見る人を選ぶような作品を送り出すと噂*1の若手演出家、なんて不似合いでちぐはぐな響きだろうか。
彼女をよく思わない人からのあまりよくない噂も耳にする。それと同時に彼女を絶賛する人もたくさんいて、だからこそグローブ座でGWの一番チケットが激戦の時期で演出家として舞台を出せる。
その不似合いさ、彼女の不思議さに惹かれ、引き込まれ、気づいたらその日の晩には彼女が主宰する劇団の定期公演のチケットを手に入れていた。


「皆、シンデレラがやりたい。」
M&Oplaysプロデュース『皆、シンデレラがやりたい。』

あらすじ

とあるアイドル「一ノ瀬陸」(通称りっくん)の追っかけで知り合った3人組、榎本、神保、角川は定期的にあるライブの後必ず3人で集まってお疲れ会をしていた。

ある日、頑なにスマートフォンにしないと言っていた神保がスマートフォンにしたことをきっかけに3人でツイッターを始める。そしてツイッター上でアイドルの恋人らしき女の子を見つけ、苦労の末、その女の子のアカウントにたどり着く。 その女の子は自分たちと同じりっくんファンで、いつもライブにいる女の子だった。 彼女の名は、三村まりあ。芸能人、とまではいかないけれど地下アイドルのようなことをやっているらしいということがツイッター上で発覚する。

「一ノ瀬陸」というアイドルを中心に、出会うはずのない4人と、三村のファンという筒井裕翔という男の子も加わり、奇妙なバトルが始まる。 お互いの利害が絡まり、一瞬前には敵だと思っていた者が次の瞬間、味方のように思え。。。 そして話を進めていくうちに、「浮気をするような男はよくない」と全員の敵が陸になる。その瞬間が三村の狙いだった。陸を独占するために、陸のファンを減らそうと画策するまりあ。

そんなことには気が付かず、くだらない口論を続ける3人。しかし、三村の陸への思いは愛なのかと疑問に思い出す筒井。ファンをなくすという明確な目標を楽しんでいるだけで、好きじゃないんじゃないかと三村の心を言い当てる。 「本当の追っかけならば、そのアイドルの幸せを願うのがファンだ。」と、彼氏がいるのは嫌だけど、なんとかその現状を飲み込もうとする筒井。そんな行き過ぎたファン筒井を見て、徐々にみんな冷静になっていく。

地下アイドルでもアイドルではいたい、けど、その職業を捨てても陸を自分だけのものにしたいという思いの間で揺れ動く23歳の三村。彼女よりも年齢を重ね、そんな甘酸っぱい感情ははるか昔に無くし男性アイドルに命をかけこじらせまくった榎本、神保、角川の3人。 社会から外れ、友達もなくただアイドルだけに命をかけてきた40代バツイチの女の行く末は、果たして___。
(公式サイトより原文ママ)

(補足:割とあらすじとキャラ設定変わってる箇所がいくつかありますがまあ、前情報無しで大丈夫。ちゃんと説明があるのと見てればわかる)

以下ネタバレ含感想
(※セリフ等はうろ覚えニュアンス)





要するに3人のドルオタVS匂わせ彼女、という対立構造から本当の幸せは何か?とかドルオタという生き物の滑稽さをぎゅっと詰め込んだ1時間45分。


榎本・神保・角川の3人はインディーズアイドル「一ノ瀬陸」のファンミーティングで出会って以来、神保の運営するスナックで定期的に集まってはぐだぐだと身のない話をする。
わー!身に覚えがある!笑
ありすぎて辛い!!!!


突然だけどここでいかれたメンバーを紹介するぜ!

Twitterスマホ?なにそれ?よくわかんないけどりっくんの敵は私の敵!とりあえず何でもRTするぜ!RTババア神保!(余談だが、RTばかりするアカウントの存在を同行者も私も予てから「ああいう人ってなんなんだろう...?」って疑問に思っていたのですが、この舞台を見て納得がいった節がある。Twitterわかんないですー><(RTボタン押しながら)みたいな層ってこういうことだったんだね?!)

「私が頑張って働いた1万円は、お金持ちな皆様が湯水のように使う1万円よりよっぽど価値があるんです><」「お金じゃなくて気持ちです><」お金の価値は平等だぞ?!ユニクロしまむら大好き♡りっくんの現場だってしまむらのスウェットで行くの♡ユニクロババア・榎本!

愛しのシナモンきゅんとふわふわロリータファッションでいつまでも可愛いアテクシ♡(※41歳)サンリオ・ロリータ・高級プレゼント♡ハンドルネームは「シナモン姫♡」いつまでも私がお姫様だぷぅ〜?電波ババア・角川!


※実在する特定の誰かをdisる目的ではありませんので悪しからず。一般論!一般論だから!


ドルオタ3人衆、「ラーメン三銃士」のごとく「こんなおたくいるいる!」の連続すぎて見てて辛い。ほんとジャニに限らずどの現場にもいるよね....
うちわとペンライトを振り回しながら踊り狂う感じとかおたく同士でライブの再現をする感じとかリアルすぎて辛いです。自分を見ているようだ....


りっくんのライブで神保が他のおたくを押しのけて手に入れたタオル(あるある)を仲良く三等分....等分?等分とは....まあいいや、三等分(概念)する3人。うわ!手口が汚ねえ!「私たちは友だちだから♡」って都合がいい時だけ仲良しなのも女子って感じですごいわかってしまって辛い。
愛しのりっくんからタオルを手に入れて喜び最高潮なのもつかの間、三村まりあという若手アイドルがあろうことかりっくんの寝顔をTwitterに載せて交際発覚!

あるあr....ねーよ!流石に公式アカウントじゃそこまで露骨にやらねーよ!匂わせるにしてももっとあるじゃん?!ルッコラの葉脈が一致とか描いた絵のパグの目に部屋とかさあ?
とまあ、そんなツッコミはさておき。

匂わせ彼女・三村まりあに怒り狂う3人は徹底的に三村まりあの粗探しをはじめ、寝る間も惜しんでTwitterに誹謗中傷を書き込み続け、三村まりあのアンチ垢と化す。
知ってるー!あんまり深入りしたことないけど知ってるう!陰謀論何でもかんでもこじつけエトセトラエトセトラ、、とりあえず「ブス!」オメー自分の顔鏡で見てみろよ!(とかいいつつ女優さんは3人ともお綺麗だった、、VBBでも拝見しましたが高田聖子さんほんといい女すぎて♡)
っていうかりっくんがエゴサで見てるであろうりっくんファンアカウントでそのままアンチ行為するなよ......という盛大なつっこみ。
あと、「シナモン姫」、鍵垢じゃねーのかよ。


痺れを切らした三村まりあのマネージャー、なんとTwitterの位置情報から彼女たちの居場所を割り出し、神保の店に乗り込んでくる!
この男、強火まりあ推し。やだ、お揃いだね?(違う)
ちょっぴり気は弱いけれど、まりあのためならアンチ垢の中の人にも直撃☆
とりあえずお金で解決しよ!


3人の中で最古参で夫が金持ちのマダム神保と金の出元は謎だけど毎回CDを1000枚近く買い、湯水のように金を貢ぎ続ける角川には分厚い札束。
あまり金を使ってこなかった榎本には2万円。
わーー!えっぐい!笑 エグすぎる!
怒る榎本。
「たった2万円って!私が頑張って稼いだ1万円とこの人達が人の金(夫など)で豪遊してる1万円じゃ価値が違うんですよ?!りっくん言ってた!お金じゃなくて気持ちだって!気持ちなら私が一番強い!それを2万ぽっきりって!ねえ!」
気持ちはわからないでもないけれど、こういう"気持ち"論がどうしても気持ち悪くなってしまう。自分の収入の範囲で払う、素晴らしいことだと思う。私だってCDを買うため、ツアーに行くために4時に起きてアルバイトするみたいな生活してるし。気持ちさえあればいい、なんて言えたらかっこいい。気持ちいい。だけど、それって結局こちらのエゴでCDが売れなきゃ会場は大きくならないし、次のシングルだって出ない。*2
榎本さんだって他2人に負い目を感じているからこその気持ち論なのだ。
)2万しかもらえないなんて(今までの見返りとして少なすぎる!)」の()内がひしひしと伝わってくる演技、うますぎてエグい。
負い目を感じてるわけじゃなくて心の底から「気持ちが一番大事!だから金額の問題じゃないし私はそれを負い目に感じない!」って言ってたらかっこいいんだけど、そうじゃないから気持ち悪さだったり劣等感だったりでグサグサと刺されて心が痛む。
わかるよ、わかるんだけどさあ、なんだろうね?この気持ちの正体を知りたい。



勿論「お金なんかでこの怒りが収まるか!」と埒があかない3人の目の前にとうとう三村まりあが現れる。ご本人登場。
あんなに死ねだのブスだの書いてたくせに本人の前では何も言えない3人。


まりあの口から、「一ノ瀬陸がホストであること、それは角川の勧めであること、そしてホスト一ノ瀬陸に角川が贈った大量の高額なプレゼントを返しに来た」と告げられるとまあ大変!


まりあVS3人衆の構図が、榎本・神保VS角川に変わったではありませんか!

「私たちの知らないりっくんを知ってるなんてずるい!」「プレゼントも接触も禁止のりっくんにプレゼントを渡してたなんて!」「りっくんと色恋の関係にあったの?!」

そうです、おたくが何よりも憎いのは自分より美味しい思いをしている同厨・同担。いくら同じ人が好きで仲良くなったと言えど、抜け駆け禁止はどこの世界でも暗黙の了解なのです。
怖い!エグい!怖すぎる!笑 同担拒否♡って最初から明言してる方がよっぽどかわいいよね!

角川のプレゼントに混じる手作りスノードーム。
なんと榎本が角川にプレゼントしたものと同じものだったのです。(手作りのスノードームを人に渡して喜ばれると思ってるところがまた気持ち論に繋がってむず痒いですよね)
「あんたも行ってるじゃない!」
「月一回だけです><節約して頑張って貯めたお金で><」
「あんだけ角川さんのこと責めてたくせに!」

そして妙にホストクラブについて詳しいことからボロがでて神保も客だったことが判明する。

ああ!醜い!女こわいよお!
結局みんな一緒なんだから。


ようやくまりあVS3人衆の構図に戻ったところで、まりあの独白が始まる。

「一ノ瀬陸は最低の男なんです。」

一ノ瀬陸はいかにひどい男で、でも自分のモノだってみんなに知って欲しくて、寝顔の写真を載せてしまった、と話すまりあ。

あまりの壮絶な打ち明け話に、神保・角川の2人は一ノ瀬陸への熱が冷めるが、榎本は良かれと思って忠告しに来たまりあに対して、「おせっかいだ」と一蹴する。

「あなたからどんな話を聞こうと、りっくんのことを思う気持ちは変わらない。」「あなたがりっくんに心を不安定にさせられたから私たちに吐き出して安定させようとしたけど、その話で私は不快になった。おせっかいだ」
「りっくんに出会えて、毎日が楽しいんです。やっと生きる意味が、今まで質素に暮らして来た意味がわかったんです。だから、その魔法を解かないで」
「やっと、シャンパンタワーの費用が貯まるんです。夢が叶うんです」
「心でしか繋がってない貴方とりっくんより、金を払った見返りが返ってくる私とりっくんの関係の方がよっぽど強い。私はまだりっくんに払ったお金の見返りを回収しきれていない。」


アイドルがいかにひどい人間であろうと、それをファンに告げるということはある種のお節介であります。
どうせ彼女がいるのも裏垢でおたくきもいwとか書いてるのも女子ドルがJrと繋がりありきなのも知ってるよ!ランボルギーニに乗ってるのも知ってる!けどそれは我々が知ったところでどうしようもないしどうこうしたい事項でもない!!知るかよ!AV嬢と付き合ってようが軽自動車に乗ってようがちゃんと仕事してくれればいいわ。
我々は夢を買っているのであって、本気で彼ら彼女らそのものを信じているわけではなく、アイドルとして夢を与えてくれる存在を愛してやまないのですから。
夢を醒ます行為は一番ナンセンスで、やってはいけないことなのだと思います。
たとえドクズでも性格が悪くても、我々の目の前の彼らは我々に夢を誘い、まるでお姫様になったかのような魔法をかけてくれるのです、そうシンデレラのように。

榎本さんの気持ち論ってこういうところに帰結するのかな?
見返り云々の話は最大のブーメランであり、今作において最高レベルの皮肉なのだと思います。

全身ユニクロしまむらの地味で質素な榎本は、角川に貰ったドレスを着て、神保のシャネルのヒールを履き、一ノ瀬陸の勤めるホストクラブに走り出す。

一ノ瀬陸にエスコートされ、多くのホストに囲まれシャンパンを注ぐ彼女は別人のように輝いていたーーー。



****

「位置情報をオンにしたのは私です」
「陸さんに聞いて、会って見たかったんだよね、陸さんの彼女はどんだけ重い女の子なんだろう?って」
「初めまして、一香キララです」

あれ?思ってたよりハッピーエンド?
んなわけなかった!
まりあのヒモの陸がホストをしてまで貢いでいたキャバ嬢は実は神保の娘、いっちゃん(ユイ)だなんて!明るい狂言回しかと思いきやまさかのオチで腰が抜けかけた。
一ノ瀬陸なんて知らなーい!けど面白そうだから協力するよ!なんていって、まりあを計画的に誘き寄せる、本当に怖いのは何にも考えてなさそうな女なのであります、ちゃんちゃん♪


出てくる登場人物が本当にみんなクズしかいなくて痛快でした!
まりあにいじめられてグズグズ泣いてる筒井さん、不憫可愛いけど、ドルオタ上がりでマネージャーでまりあの元カレって、担当アイドルに手出すマネージャー(っていうか下心ありきの就職なんでしょうね)クズすぎるー!!かわいい♡とか騙されちゃダメだぞ!!クズ!すぎる!ずるい!こういう役小山さんに欲しい!!
結局みんな自らのエゴの為に争い、人を見下し、優越感に浸る。
痛快、だけど同じドルオタとしてグサグサ刺さる。

心情描写がリアルすぎてうますぎる。クズの描き方が上手い。上田たっちゃんの舞台ももちろん、根本さんが作る作品がもっと見たいな、と感じた。割と世界観好きかも。自分の目で見て、身体中で体感してこのことが知れたのは幸せだった。
そしてねもしゅーさんいつか小山さんの舞台の演出してくださいね♡めっちゃ待ってる♡

新垣里沙さん(まりあ)が本当に演技にメリハリがあってかっこよくて、すごいなあと思ったので新垣さんももっと見たいな!怒るシーンと冷静なシーンの切り替えが上手だし、長ゼリフをスラスラとかまずにずっと感情的に言えるのが本当にすごい.........声が綺麗。

この舞台を観た晩に同担3人で飲んでる*3構図が地獄すぎるけど、やっぱり同担と集まるの楽しいし、アイドルの魔法にかかっているのも楽しいし幸せだな、とも感じる。
結局私もまたシンデレラ役を演じたくて、魔法にかかったと錯覚して、それを幸せだと享受する側の1人であって、それで十分だし、それが似合っていると思う。

宴を終えて帰路を急ぐ。日曜22時59分。ラジオをつける。住宅情報館のCM。さあ、今度は私が魔法に掛かる番だ。

*1:あくまでその時点では噂だ。だって、この目で見てないんだから

*2:なお、複数買いを推奨だの強制だのしているわけではないので悪しからず。同じCD何十枚も持っててもどうするの?って感じでしょ?そこもまた個人の満足度とかエゴの話なので今回はあまり重要ではない

*3:舞台を観にいったのとはまた別のお友達